PAGE TOP

WEF

MENU
2015.09.04 UP

公開シンポジウム第4回開催報告「新たな視点で、ビジネスを立ち上げる―イノベーションをリードする現場力」

WEF設立1周年記念シンポジウムを、7月22日に開催しました。220名を越えるキャリア女性や企業幹部に参加をいただき、満足度の非常に高いシンポジウムになりました。

 

基調講演は、㈱ディー・エヌ・エー取締役会長ファウンダーの南場智子氏。パネル・プレゼンターは、㈱三越伊勢丹の執行役員で伊勢丹立川店長の石塚由紀氏、カルビー㈱上級執行役員の鎌田由美子氏(今年の4月までJR東日本で、エキナカ(ecuteなど)や各種新業態立ち上げを担当)。それぞれ個性あふれる示唆に富んだ素晴らしいプレゼンでした。

 

テーマは「新たな視点で、ビジネスを立ち上げる――イノベーションをリードする現場力」。

冒頭に尾原会長から、シンポジウムの狙いが ①活躍する女性のロールモデル表出、②タイムリーなビジネス課題への取り組み、にあるとの挨拶がありました。

 

南場会長の講演は、16年前に自ら設立したDeNAの、Eコマースからゲーム、さらに直近のヘルスケア分野(MyCode)へと“インターネットと巨大産業の協創”による多様な事業展開を通じて確信となったイノベーションとリーダー論でした。たとえば新規事業への取り組みについては、「企画」「準備・開発」「スタート」の各段階の間に、トップの判断(進行の許可)を入れていたものを、“Permissionless”(許可なし)にし、4段階目の「スケール」(大規模展開)に移行する段階で初めてトップの判断を入れる、と変更。理由は、事業の成否は顧客に問うのがベストであり、まずやってみてフォロワーがどれだけつくか等の反応を見て、大規模展開のための巨額投資を経営者が判断する方が、今のビジネスに合っているというのです。

革新的ビジネス手法としてのデータマイニング(ビッグデータ解析)も強く印象に残りました。新規事業のマーケティングでは、従来の「人口動態的な顧客セグメント」(年齢・性別など)より細かな、「個々人への最適化」が有効で、そのために「1日50億超の行動解析ログデータ」を取っている。その結果、「利用開始促進」は、3.8倍に、「利用継続」は9.7倍になったといいます。

イノベーションのため、“生きのいいアイディアを出せる”人材と“データ分析の鬼”を、トップレベルで確保することに注力している、とのまとめに、皆、納得した事でした。

 

石塚氏は、伊勢丹入社30年目で執行役員になるまでの社会と自社の変化を振り返りながら、経験談を「サバイバル編」「マネジメント編」「リーダーシップ編」の構成でクールに、またユーモラスに話されました。マネジメント編では、入社以来ファッション分野を歩んで来たのに、部長昇進は未経験のリビング分野で、商材の知識もマネジメント経験もない中、部下に力を発揮してもらうしかないと考えた事。そのためメンタルヘルスやカウンセリングの資格を取り、個人の幸せと会社の目標を融合させる努力したとの話は、多くの共感を呼びました。“イノベーションの現場力”では、男性とは「肌実感」がちがう女性、また多様な人材によるダイバーシティ・インクルージョンが重要。「1500人いれば、その数だけの顧客との接点がある」と言います。

 

鎌田氏は、旧国鉄の文化を引き継ぐJR東日本で、エキナカ2001 のプロジェクトを35歳のリーダーとして部下2名でスタート。Ecuteを成功させ、ステーション・ルネッサンス事業、また地域活性化をねらうAOMORO CIDRE(青森でリンゴ・シードルの製造)等、多くの地域や専門家を動かす仕事に関わられました。印象に残った言葉は、「新しい事業コンセプトへの理解を得るのに苦労した。仕事の相手は、内部が80%で外部は20%。出来上がって見える形になると、『こういうものだと最初から言えば分かったのに』と言われて『言ったじゃないの』といつも思った」。カルビーに移ったのは、やはり“現場の仕事”がしたかったから。優れた経営に不可欠な、Leadership、Plan、Vision。それを、簡素化、透明化、分権化で進める会長のもとで、いきいきと事業開発本部長を務めているとの事でした。

 

お二人は共に、「大組織の中の女性」は、たえず、「理論武装をし、数字で説明し、説得することが必要」、と強調されました。これは自分の想いで起業、事業推進して来られた南場さんとの大きな違いであり、この点で女性も成長せねばならないし、企業側あるいは男性も、“現場の顧客の声”を新たな革新に繋げるためには、「既定概念」から抜け出なければならない、と、強く感じました。

 

最後に、生駒芳子さん(WEF理事)のリードによるパネルでのお二人のメッセージを記します。

鎌田さん――「やってみたら! うまくいかなければもう一度やればいい」

石塚さん――「自分がどうしたいのか、正直になれ。キャリアは長いライフスパンで見よ!」

 

(文責WEF